土葬について(その2)<篠山のお葬式屋さん徒然日記>

みなさんこんばんは

今回は前回引き続き

土葬について

書いていきたいと思います。

前回は土葬のイメージや大変さなんかを書きましたが今回は実際の流れについて書いていこうと思います。

現在のお葬儀の場合は病院などで亡くなると寝台車で自宅に搬送し安置するか、直接葬儀会館へ移動する形になります。そのご葬儀社と打ち合わせをしてお寺様にも確認をし日程を決めます。篠山の場合はこの後に受付などを手伝ってもらう村の方との打ち合わせがあり、葬儀の準備、通夜、お葬式と続いていきます。この間ほとんどのことは葬儀社がしますのでおうちの方は故人を見守りながらお供えやお食事の数を決めたりしつつ過ごされます。

これが土葬の場合は自宅に安置をした後、お寺様に枕経をいただいてから村の方に集まっていただき日程などの相談をするところから始まります。ここで日取りを決めた後は葬儀委員長を決めてその方の指揮のもと役割分担をきめることになるのですが、大きく分けて5つの役割があります。ちなみに葬儀委員長はほぼ自治会長がすることが多かったです。

役割分担は葬列の道具を作る係、お寺の道具を用意する係、受付をする係、お食事の用意をする係、そして棺を納める穴を掘る係になります。当然二つを兼ねる人などもいます。葬儀社はお棺や位牌などの手配や祭壇の設置をするぐらいです。あとは村の方が決めていくのですがやはりさまざまな方がおられるのでなかなか決まらなくて苦労していることを見ることもよくありました。

この間主要な当家の方は話し合いに参加し、女性の方はお茶の接待などをするので結構忙しいです。この状況はお葬儀が終わるまで続きます。本当に大変だったと思います。

役割が決まりましたら準備していくのですがまず山へ行き竹などの材料を集めてきます。それを使って一つ一つ手作りで道具を作っていきます。灯篭や天蓋など村で使いまわせるように骨組みを持っている物もありますが、それも周りに紙を張ったりなどはしないといけないのです。道具の種類は15種類ぐらいはありますのでとても大変な作業でした。またそれぞれの道具については紹介してみたいと思いますが今回は流れを書いていきたいと思います。

この作業はほぼ丸1日から2日かかるのでその間ずっとご当家には人が出入りすることになります。近所の方たちなのでよく知っている人ばかりですが結構気を使うことも多かったんじゃないかと思いますね。

道具ができましたらその次の日がお葬式になることがほとんどでしたが、それまでに同時進行でお墓の穴を掘る作業も続いています。座棺の場合は1.5メートル四方の穴を縦に二メートル、寝棺の場合でも縦2メートル横1メートル、深さ2メートル近くは掘らないといけないのでこれまた大変な作業です。前回も書きましたが大きな石があったりそれこそ以前に埋められた方に出会ってしまったりさまざまなことが起こります。かなり過酷な作業でしたので「穴掘りさん」はとても大事に扱われました

またその間地域の女性たちはご飯を作る準備をし、お通夜の晩と当日の食事を作ります。昔はお通夜の晩はお酒を飲み、ほぼ宴会状態になることもよくありましたので家の方はその接待をしていました。お葬儀の当日はさすがにお昼の時は地域の方がしてくれますのでいいのですが葬儀後の精進上げではまた接待をするのが普通でした。

土葬の場合は葬儀の儀式も今とは違い、まずは自宅で故人がお坊さんになる儀式を行います。そのあと葬列を組み、皆さんがつくっら道具をそれぞれ手に持ちながら棺を埋める場所へと向かいます。よく言われる「野辺送り」ですね。このとき当家の方は裸足に藁草履という格好で向かいます真冬でもここは変わらないのでかなりつらかったと思います。場合によっては履いていったぞうりは墓地に置いて帰りは裸足ということもありましたし。また自宅から棺が出るときには庭先で棺を三回ぐるぐる回すこともありました。これは故人の方向感覚を狂わせて戻ってこれないようにする意味があったようです。要するに戻ってこないでまっすぐに良い所へ向かってほしいという思いがこもっていたのでしょう。

墓地へ着きましたらここでお坊さんからあの世への旅立ちをする儀式を行います。いわゆる引導作法です。この儀式が終わりましたら焼香をして穴を埋めて終了となるわけです。

このころは初七日を当日にすることなんてありませんでしたのでこの後はみんなで自宅に戻り穴掘りさんにはお風呂に入ってもらいます。そしてそのあとみんなで精進上げの食事となるわけです。

ここからはほぼ宴会状態でお酒も入りかなりにぎやかな状態になりました。当家の方はこの間接待をするのでかなりしんどかったと思います。とはいえ皆さんが当家のためにお手伝いしてくれているので感謝をこめてされることの方が多かったですけどね。

食事が終わるとこれですべて終了となります。この間3~4日はかかりますのでかなり大変なものだったと思います。ご当家はもちろん地域の人もその間このお葬式にかかりっきりになるわけですから。皆さん終わった後はへとへとだったと思います。

このころは毎回人が亡くなるっていうのは改めて大変なことなんだと実感していました。現代ではもうこのようなことをする機会はほぼないかもしれませんが、このころは人が亡くなるとそれこそ一大事で周りの方が手伝い想いをこめて葬儀を行いました。確かに大がかりで大変なんですがこういった亡くなった人に対する想いだけは少なくとも受け継いでいきたいと思います。

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